数年前、薬剤師の妻が転職(職場替え)しました。
転職時に調べたこと、気を付けたことを体験記として残します。
転職を考えている薬剤師さんや就職を控えた薬学部の学生さんの参考になればと思います。
転職で年収が200万円以上アップ!
妻は全国展開している調剤薬局に5年ほど勤めていましたが、結婚・出産を機に転職を決意しました。
主な動機は給料アップと労働環境の改善でした。
結果を先に言ってしまいますが、年収は200万円以上あがり、残業もなくなったので子育てへの負担も減りました。
転職は成功したと言っていいでしょう。
実際の源泉徴収票です。薬剤師の全国的な平均よりも高い水準になります。
妻の薬剤師としての経歴
転職前は全国展開しているチェーン店に勤めていた妻。
年収は総支給で450万円ほど。
それほど多くはないですがちょくちょく残業がありました。
妻がこの会社に勤めた経緯は、そもそも大学が関東にあり、田舎育ちなのでもうしばらく都会を満喫したいと卒業後も関東圏に出店している会社を選んだとのこと。
それほど深く考えての事ではなかったようです。(^-^;
しかしふたを開けてみると勤務地は関東と言っても全く馴染みのない栃木県。
栃木で働いていたころは職場の人間県境にも恵まれ、休日は栃木観光をしたりと楽しい時間を過ごしていたようですし、30歳を目前に控え、結婚を機に秋田の田舎へ戻ろうと考えていた時に秋田の店舗への異動がスムーズにいったので、全国展開していた会社に勤めていたのは結果的にラッキーだった様です。
秋田の支店で数年働き、管理薬剤師として勤めましたが、結婚・出産のタイミングで自分の働き方を見直そうと転職し、今では地元密着の調剤薬局で管理薬剤師として働いています。
薬剤師の転職地図
転職を考える際に、業界の動向や特徴のリサーチをしました。
会社の規模が大きいほど給料は少ない⁉
妻が以前働いていた会社は全国展開しており、関連子会社も複数持つ規模の大きい会社です。
新卒で入る際は「大きな会社の方が安定していてよさそう」だという漠然とした考えを持っていたそうですが、実際はグループ店舗が多いほど年収が低い傾向があります。
管理薬剤師への手当てもわずか数万円で、「責任が大きいのに手当てが少ないから管薬はやりたくない」とぼやいていました。
また、会社規模が大きいと本部での方針に現場が振り回されることも多く、実際の業務以上に仕事量が多かったようです。
秋田の田舎で働くことを考えると、全国展開している大手にしがみついているメリットはあまりないので、転職先は地元で数店舗展開している小規模の調剤薬局に絞って探しました。
病院は激務⁈、ドラッグストアは一考の価値あり
転職をする際に横のつながりで地元で働く薬剤師に話を聞くと、病院勤務は給料がそれほど高くなく、夜勤などが入ることがあるということで候補から外れました。
妻の偏見かもしれませんが、田舎の病院は患者の待ち時間を減らすという努力をあまりしないため、病院から調剤薬局に転職した薬剤師さんは業務に慣れるのが大変だとのことです。
とはいえのんびり仕事をしているわけではなく、医師の診察やスタッフによる治療など、薬剤師一人で立ち回るわけではないので時間のやりくりが難しいのでしょう。
また、病院には様々な立場のスタッフがいるからこそ、職場の人間関係も大変だという話を聞かされていたようです。
他に候補に挙がったのはドラッグストア。
こちらは全国展開している規模の大きな会社でも待遇が良く、調剤薬局よりも給料が高い傾向があります。
田舎の特徴なのか町にはドラッグストアが多く、車社会なのでドライブスルー調剤といったサービスを提供している店舗もあり、薬剤師の求人も多くありました。
調剤業務以外にも日用雑貨や化粧品の販売業務を兼ねたりノルマがあったりするようですが、パートなどの時間に融通の利く求人も多かったのが印象です。
妻は「奨学金を払い終えて、子供にお金がかからなくなったらドラッグストアでパートしようかな」なんて言っていましたが、今はドラッグストアが薬剤師の奨学金を肩代わりするという話もあるようですね。
調剤薬局は倒産件数が増え、2021年に過去最多になっています。
それに比べてドラッグストアは勢いを増し、好待遇で薬剤師を獲得しようという流れがあります。
これからの薬局はオンラインや宅配業務に活路があると言われていますが、ドラッグストアは独自の販売・配達ノウハウでこれから伸びていく業態かもしれません。
特に田舎のように遠方から一日がかりで病院に薬をもらいに来る患者さんがいるような地域では、食品・日用品・処方薬などをまとめて届けられるインフラのような役割をドラッグストアが担っていく可能性はありますね。
ドラッグストアに勤めるのは、ある程度業界の「勝ち組」が見えて仕組みが固まってからでも遅くないかもしれません。
妻の「ゆくゆくはドラッグストアでパート」という判断は実は理にかなっているのかも?妻は物事を深く考える方ではないのですが、運が良く上手く流れに乗ってきているタイプだと感じます。
薬剤師は田舎で好待遇
薬剤師の都道府県別年収ランキングを見ると、上位を占めているのは地方が多いです。
順位や年収額はランキングによって違いがあるので参考程度に見ていますが、上位10位にあがっている県ををまとめると
静岡、長野、高知、島根、愛知、青森、秋田、宮城、三重、山形、山梨、大分などです。
のきなみ地方が占めていますね。
我が秋田を含めた東北が多いのが印象的です。
年収が高い理由として、大手の薬局が強くない地域であること、薬学部が少なく都市部に比べて薬剤師が少ないこと、製薬会社の拠点があることなどが挙げられます。
都市部は薬剤師が多いので、以前の妻のように大手チェーンで関東勤務を希望しても埼玉・千葉・栃木などの店舗に配属されることが多いです。(秋田の田舎からみれば充分「都市部」ですが)
全国チェーンの給与水準から田舎(地元秋田)の小規模店舗に転職したのが年収アップの大きな要因だったかもしれません。
何事も、需要が高い「勝てる場所」で戦うのが賢い戦略です。
20代のころは都市部で過ごしたい方も多いでしょうが、30歳を超えて結婚出産の機会があれば、生活コストが少なく子育てしやすい田舎に目を向けてみてはいかがでしょうか。
田舎の薬局は給与の交渉余地あり⁉
転職で年収が上がった要因として、上記の条件の他に採用面接の際の給与交渉がありました。
交渉と言っても、面接の際に「年収はいくらくらいが希望ですか?」と聞かれたので妻は「600万円くらいです・・・」と答えただけです。
妻の気持ちとしては、これまでの年収が450万円ほどだったのでそれよりは多くもらいたい、というのがあり、とりあえずダメ元で「少し無理目かな?」と感じる600万円を提示したそうです。
結果、すんなりと「わかりました」となり、採用。
数年たった今では冒頭の画像の通り、総支給は674万円となっています。(30代半ばの時点)
今になれば妻は「もっと高い額を言っておけばよかった(笑)」と言っていますが、十分な結果だと思います。
妻の転職先の薬局は経営母体が全くの異業種で、経営状況に余裕があり、待遇を厚くしてでも長く安定して働いてくれる人材を探していたという面もありますね。
地方は魅力的な求人が少ない半面、決まった業種の求人が絶えずあります。
それが薬剤師、介護士、理美容師などです。
つまり時代に左右されず必要とされる業種で、業務に国家資格資格や経験が必要で、女性が多い職種ゆえに結婚出産などで職を離れる時期があって慢性的に人手不足な業種です。
薬剤師のような国家資格を持った女性にとって、地方は好待遇で働きやすい場と言えます。
田舎になるほどその傾向は顕著で、上に挙げた薬剤師、介護士、理美容師は同一地域内での転職・引き抜きは当たり前で、まさに引く手数多な現状です。
薬剤師は個人の病院や調剤薬局は昇給が低いと言われます。
対して大病院や自治体病院、公務員にあたるような職場では、最初が低く昇級にともなってどんどん昇給していくパターンが多いようです。
給料を第一に考えるなら大手や外資の製薬会社になるのでしょうが、入社するのも生き残るのも大変な世界でしょう。特に早期退職したMRなんかは薬剤師の免許を持っていても再就職が難しいという話を聞くようです。
話が少しそれましたが、昇給が少ない小規模の調剤薬局だからこそ、スタート時の給料交渉が後々大きな差になります。
薬剤師売り手市場の田舎の調剤薬局なら給料交渉の余地があると言えます。
転職後のここが不満
全国チェーンの調剤薬局から田舎の小規模調剤薬局へと転職し、年収は大幅に上がった妻ですが、まったく不満が無いわけではなさそうです。
福利厚生が弱い⁉
大手に比べての話ですが、小規模薬局は福利厚生が弱い傾向があります。
大手チェーンに勤めていたころにあった交通費や住宅手当などは今の会社ではありません。
その代わり管理薬剤師の手当てが大きかったり、業績が良かった年のボーナスの上乗せがちょくちょくあるといった具合です。
トータルで福利厚生費を上回る手当てや賞与がある感じですが、これは各会社での考え方があるでしょうからどちらがいいかは一概には言えませんね。
今の職場にも産休・育休の制度もありますが、大手のように2年間休んでくださいといったものではないので、妻は出産後半年で職場復帰しました。
もっと休むこともできたみたいですが、働いていた方が気分転換になっていいとのこと。
これも個人個人で何を重要視するかですね。
有休も普通に取れるので、たまに「用事もないけど休みたいから休んだ」といって家でゴロゴロしている時もあります。
会社の制度というよりも、職場の環境や人間関係も影響するかもしれません。
田舎特有?の助け合い精神で、少し仕事を抜けて用事を済ませたりと、職場のスタッフを持ちつ持たれつで回しているようです。
使える経費が少ない⁉
これも妻の体験によるものですが、大手チェーンに勤めていた時は薬局で使える経費の枠があり、その範囲内で薬局を飾ったり患者さんがくつろげるように工夫したりしていたそうです。
しかし転職後の会社はちょっとしたものを買うのに社長や事務長の許可が必要で、いちいちお伺いを立てるのがストレスだと言っていました。
薬局で必要になる分包機・軟膏練り機・ピルクラッシャーなどは高価でもポンと買ってくれたりする半面、消毒液のポンプを置く台や待合ソファーの修繕などにはお金を出し渋るといったこともあり、「なんでそこケチるかな~」といった愚痴を聞かされることも度々・・・
チェーン展開している大手だとルール作りがされているものが、小規模の店舗だと社長の裁量任せの部分が大きくなる傾向がありそうです。
薬剤師の妻が転職を考えた際にまずしたこと
今や薬局はコンビニよりも多いですから、一軒一軒比較していてはとてつもない時間と労力がかかります。
まずは最低限、転職サイトへの登録は済ませておきましょう。
自宅用の土地を探す際もそうでしたが、様々な不動産会社に「土地を探している」と声をかけておくことで、情報が入ってきやすくなります。
不動産会社によって持っている情報が違うので、できるだけたくさんの会社に声掛けをしておくことが重要です。
薬剤師の転職の際も、複数の転職サイトへ登録しておくことで最新の情報や求めていた情報が入ってきやすくなります。
薬局や病院が求人募集を出した際、反映される(一般の目に触れる)のに時間差があるからです。
妻の周りの薬剤師も、転職サイトに登録後、めぼしい会社を見つけたらそこで働いている知り合いに話を聞いたり、紹介してもらってお茶をしに行ったりと情報収集をしている人が多いようです。
提案された求人情報はサイトによって違う内容だったので、やはり複数のサイトに登録しておくのは必須です。
転職先を探す際に登録した転職サイトはこの3つです。
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